司馬遼太郎作「燃えよ剣」は司馬作品への道を開いてくれた小説です。
ここに描かれた「土方歳三」がどれほど魅力的だったか。
その土方を演じた「栗塚旭」さんがどれほど魅力的だったか。
そんなお話しをしようと思います。
「燃えよ剣」のドラマ化
「燃えよ剣」が放送されたのは、今調べてみると、1966年と1970年のようです。
その後1990年には役所広司の「土方」でテレビ東京で前後2回にわたって放送されています。
1966年版は、テレビ東京で13回の連続ドラマとして、内田良平の「土方」で。
1970年版は、テレビ朝日で26回にわたって放送されました。
この時の土方が栗塚旭さんでした。
主なキャストは
近藤勇・舟橋元
沖田総司・島田順司
永倉新八・黒部進
など。
当時栗塚旭27歳。
司馬遼太郎さんが「あなたこそ土方だ」と絶賛した、というのは後で知ったのですが、私にとってはまさに土方歳三=栗塚旭でした。
原作で描かれていたように、「薬屋」であり、下手な俳句の詠み手であり、武州から京都にやってきた「喧嘩屋」であり・・・・・・。
魅力的な「土方歳三」が栗塚旭という役者さんによって見事にそこに「居た」のでした。
この印象があまりにも強く、ほかの誰が土方を演じても違和感があり、特に大河ドラマでの山本耕史に至っては、まったく見る気にもならないほど。
ただ、これほどの「はまり役」に巡り合ってしまったことは俳優さんにとっては幸福なのかどうなのか、いつも考えてしまいます。
栗塚さんは確かその後も時代劇に出ていらっしゃいましたが、次第にテレビでお見かけしなくなりました。
京都で「若王子」という喫茶店をされていらっしゃる、と知ったのですが、なかなか行く機会がなく、今はもう、そのお店はないようです。
栗塚さんご自身は映画に出演されたり、俳優業を続けていらっしゃるそうで、現在78歳。
お顔はあまりお変わりなく、あの頃を思い出します。
感動して何度も読んだ「燃えよ剣」は、司馬遼太郎作品をその後夢中になって読むきっかけとなりました。
いつか函館五稜郭へ
土方最期の地になった函館五稜郭に行きたい、と長らく思いながら、いまだ果たせていませんが、いつかきっと行こうと思っています。
「燃えよ剣」では京都を離れ、近藤と分かれてからの土方は「北征編」として、洋式軍隊の指揮官として描かれています。
剣士ではなく、近藤・沖田を失った土方は孤独でしたが、最期は剣を持って倒れるのです。
その生き方は無骨で一筋で、「お雪」さんとの挿話が唯一華やいだシーンでした。
司馬遼太郎作品の中で、最も小説らしい小説と言えるのではないでしょうか。